このアプリケーションは「言語理論」(特にフレーム意味論、
FrameNet)に基づいて、「発信語彙」(話すための語彙)を増やすことを目的として作成されました。特に以下の点をベースにして作成しています。
(1)コロケーション
phone(電話)という単語はほとんど全ての学習者が「知っている」と考えられますが、この単語を「使う」(発信する)ためには、同時に使用される動詞や形容詞など(
コロケーション)も覚えておく必要があります。
例えば、「電話に出る」という表現はanswer the phone(あるいはpick up the phone)のようにいいますが、一緒に使われている
answerと
pick upをセットで覚えることで
phoneを発信語彙へと高める1つのステップになるでしょう。
(2)関連語
phoneという単語を発信する際、その前後に出現する単語だけではなく、概念的につながりがある(同じフレームに属する)単語も同時に使われることが多いと言えます。
例えば、
「携帯電話」(cellphone)や
「発信音」(tone)といった単語がその例です。このアプリケーションでは、このような語を
「関連語」として収録するとともに、「携帯電話を充電する」(re)charge one’s cell phoneのように、これらのコロケーションも積極的に含めました。
(3)フレーム要素
フレーム要素とは、フレーム(ある出来事や物事に関する一連の世界知識)に必須的に(あるいは選択的に)伴う要素です。例えば、buyが喚起する商取引のフレームでは、「買い手」「商品」「売り手」「お金」などがフレーム要素となります。これらの要素は単語を使用する場合に共起する可能性が非常に高く、いっしょに学ぶ必要があります。
例えば、phoneの関連語であるfaxは、単純なコロケーションとしてはreceive a fax(ファックスを受ける)のようになりますが、faxが喚起するフレームには「(ファックスの)送り手」がフレーム要素として存在します。このアプリケーションでは、この点を十分に留意し、
receive a fax from him(ファックスを彼から受ける)のようにフレーム要素を伴う形でエントリー化しています。
(4)フレーズ形式から文形式へ
実際の発話の場を意識し、コロケーションのフレーズ形式から文形式に発展したものを収録しました。その際、特にフレーム要素を考慮し、必須的に伴う要素は自然である限り含めるようにしています。
例えば、「電話に出る」(answer the phone)は「私が電話に出るよ。」(I will answer the phone)、「発信音」(tone)は「発信音の後にメッセージをお願いします。」Please leave a message after the tone.という形で収録されています。
インターフェイスや出題内容などはまだ未熟なところはありますが、「体系的に」発信語彙を学ぶことができるという点で画期的なアプリケーションです。今後さらに発展させていくためみなさまのご意見をお待ちしています。